「返してもらえない」「頼まれたけど断れない」「贈与税ってかかるの?」——家族間のお金の貸し借りにまつわる悩みは、思っているよりずっと複雑で、しかも誰にも相談しにくいんですよね。
実は私自身も、20代の頃に兄に30万円を貸した経験があります。「すぐ返す」という約束だったのに、半年以上音沙汰なし。催促するのも気まずくて、家族の食事会のたびにモヤモヤが積み重なっていきました。あの時もっと知識があれば、あんな後悔はしなかったはずです。
この記事では、貸す前の判断・断り方・借用書の書き方・税金リスク・返ってこない時の対処法まで、一気に解決できるよう整理しました。
家族間のお金トラブル、なぜ起きる?
「身内だから大丈夫」という油断。これが最大の原因なんですよね。
他人相手なら自然と「借用書ありますか?」「いつ返せますか?」と確認するのに、家族が相手になった途端、そのひと言が言えなくなってしまう。感情と損得勘定が混ざり合ってしまうからです。
実際にトラブルが起きやすいパターンは、主に3つあります。
- 「そのうち返す」という口約束だけでスタートした場合
- 返済期限や金額を曖昧にしたまま進めた場合
- 一度貸したら「また頼れる」と思われてしまった場合
どれも「家族だから」という甘えが根っこにあります。でも、お金が絡むと人間関係はがらりと変わることがある。それだけは、最初に頭に入れておいてほしいんです。
家族に貸す前に問うべき3つの質問
「貸して」と言われた瞬間に考えること
頼まれた時の、あの緊張感、わかりますか。「断ったら薄情に見られるかな」「でも本当に返ってくるの?」と、一瞬で頭の中がぐるぐるしますよね。
ファイナンシャルプランナーとして著名なスージー・オーマン氏は、親族から借金を頼まれた時に自分自身へ問いかけるべき質問を3つ挙げています。これが本当に実用的なんですよね。
① 貸すことが、本当に相手の助けになるか? 相手が真剣にお金に困っているのか、それとも自分で解決できるのに頼ってきているだけなのか。一時的な窮地を救うのはいいことですが、「貸してもらえる」という甘えを育てるだけになるなら話は別です。
② 貸すだけの余裕が自分にあるか? 自分が苦しくなってまで貸すのは危険です。「お世話になったから」という義理で無理して貸した結果、共倒れになったケースを私は何度も聞いてきました。自分の生活を守ることが、まず最初の優先事項です。
③ 「返ってこないお金だ」と思えるか? これは冷たく聞こえるかもしれませんが、一番現実的な問いかけです。仮に返ってこなくても後悔しない金額・気持ちで貸せるのか。「絶対に返してもらう」という前提で貸すと、返済が遅れた瞬間に関係が壊れ始めます。
断り方で関係は壊れない|気まずくない3つの伝え方
断ることは「薄情」じゃない
「断ったら家族関係が気まずくなる」と思うかもしれませんが、実は逆のケースの方が多いんです。無理して貸して、返ってこなくて、催促もできなくて……という状況の方が、よっぽど関係を壊します。
「大切な人だからこそお金を貸さない」という考え方があります。お金を貸すことは表面上は応援に見えますが、その人が自分で問題を解決する力を奪ってしまうこともある。特に何度も繰り返して借りてくる場合は、貸すことがむしろその人の自立を妨げているケースもあります。
では具体的にどう断るか。3つのパターンをご紹介します。
パターン① 自分の経済状況を理由にする(一番シンプル)
「実は今、自分もちょっと余裕がなくてさ。本当に申し訳ないんだけど……」
嘘をつく必要はありません。「ある」「ない」は相対的なもの。自分の生活を守るためにお金が必要なのは当然のことです。
パターン② パートナー・共同管理を理由にする
「二人でお金を管理してるから、自分だけでは決められないんだよね」
既婚の方や、家計を二人で管理している方には使いやすい伝え方です。「自分が断っている」ではなく「構造上難しい」という形にできるので、角が立ちにくいんですよ。
パターン③ 代替案を提案する
「お金は難しいんだけど、一緒に他の方法を考えようか」
公的な支援制度(生活福祉資金貸付制度など)や、カードローンの選択肢を一緒に調べる提案をする。「お金は貸せないけど、力にはなりたい」という姿勢を見せることで、関係を傷つけずに断れます。
貸すと決めたら|借用書の作り方と税金の落とし穴
口約束だけでは「もらった」と言われてしまう
貸すと決めたら、次は必ず書面を残すことが鉄則です。えっ、家族に借用書なんて…と思うかもしれませんが、これは「信頼していないから」ではなく「お互いを守るため」なんですね。
税務署は「家族間のお金の移動」を、証拠がなければ贈与とみなす可能性があります。贈与税の基礎控除は年間110万円。例えば親から子どもへ200万円を渡した場合、証拠なければ90万円分が課税対象になりえます(税率10%なら9万円)。これは知らないと怖い話ですよね。
借用書に書くべき7つの項目
借用書には最低限、以下の項目を入れましょう。
| 項目 | 書き方の例 |
|---|---|
| ① 金額 | 金参拾万円也(漢数字で改ざん防止) |
| ② 貸付日 | 令和○年○月○日 |
| ③ 返済期限 | 令和○年○月○日まで |
| ④ 返済方法 | 毎月末日、銀行振込にて |
| ⑤ 利率 | 年○%(または無利息の旨) |
| ⑥ 借主の署名・捺印 | 自筆で |
| ⑦ 貸主の署名・捺印 | 自筆で |
金額は必ず**漢数字(壱・弐・参など)**で書くこと。算用数字は「1」が「10」に書き換えられるリスクがあります。
無利息で貸すと「利息分が贈与」になる?
実はここ、多くの人が見落とすポイントです。
無利息で貸した場合、「本来もらうべき利息を免除した」として、その利息相当額が贈与とみなされる可能性があります。ただし、その金額が年間110万円の基礎控除以内であれば、贈与税はかかりません。
例えば、親から子どもへ100万円を年0%で貸した場合。法定利率(年3%)を参考にすると、1年分の利息は約3万円。110万円の控除内に収まるため、実務上は問題ないケースが大半です。ただし、1,000万円以上の大きな貸し借りになってくると話が変わってきますので、そのケースは必ず税理士に相談することをお勧めします。
返済は「振込」で記録を残す
現金手渡しで返済していると、後から「ちゃんと返した」「いや返ってない」という水掛け論になりかねません。銀行振込や電子マネー(PayPayなど)での返済なら、日付・金額・送金先が記録として残ります。たった一手間ですが、これが後のトラブルを防ぐ大きな一歩になるんですよ。
「返してくれない」時の5段階アプローチ
催促できずに時間だけが過ぎていく、その前に
家族相手だと催促できない。これは本当によくある話です。「言い出しにくくて、もう2年…」というケースも珍しくありません。でも放っておくのは禁物で、**返済請求権の消滅時効は5年(または10年)**と決まっています。時間が経てば経つほど、法的に取り返せる可能性が下がっていくわけです。
ステップ1:LINEやメールで穏やかに催促する まずは関係性を壊さないよう、柔らかく切り出します。記録が残る手段を使いましょう。
「ちょっと自分もお金が必要になってきたんだけど、○月に貸したお金、少し返してもらえると助かるんだよね」
大事なのは、感情的にならないこと。そして相手が「了解」「もう少し待って」などと返信してきたら、スクリーンショットを必ず保存しておくこと。これが債務の承認を示す証拠になりますよ。
ステップ2:返済スケジュールを再設定する 「全額一括で」と言うと相手が追い詰められて逃げることも。月3万円×10か月など、現実的な分割案を提案する方が、動いてもらいやすいんですね。
ステップ3:内容証明郵便を送る 話し合いで解決しない場合は、内容証明郵便を送ります。郵便局が発送の事実と内容を証明してくれる郵便で、相手に「本気度」を示せます。費用は1,000〜1,500円程度。弁護士に頼まずとも自分で送ることができます。
ステップ4:支払督促・民事調停を申し立てる 裁判所を通じた手続きです。支払督促は60万円以下の少額なら自分で申し立て可能。民事調停は調停委員を介した話し合いで、訴訟より費用も時間も抑えられます。
ステップ5:訴訟・強制執行 最終手段です。請求金額が140万円以下なら簡易裁判所に申し立て。勝訴しても相手が払わない場合は強制執行(給与や預金口座の差し押さえ)ができます。ただし、ここまで来ると家族関係は取り返しのつかない段階になるケースが多い。そのため、ステップ3か4あたりで専門家(弁護士・司法書士)に相談するのが現実的です。
相続時に発覚する「貸付金トラブル」
生前の貸し借りが相続でもめる原因に
これは多くの記事で言及されていない盲点なんですが、親が亡くなった時、親が子どもに貸していたお金は相続財産に含まれます。
たとえば、父が長男に500万円を貸していたとします。父が亡くなった後、その500万円は「貸付金」として相続財産に計上され、次男・三男も相続権を持ちます。「借りた覚えはあるけど、口約束だったし、もう返したつもりだった」という状況になると、兄弟間で猛烈な争いが起きかねないわけです。
書面なしの貸し借りは、相続トラブルの火種になる。これは断言できます。生前に借用書を作成し、返済記録も銀行口座に残しておくことが、家族全員を守ることに直結するんですね。
借りる側の心構え|お金を借りた後の「7つのルール」
「家族に借りてしまった」という方へ。返し方にも気持ちが出ます。
- 借りたその日に借用書を提案する(自分から言い出すことで信頼が上がる)
- 返済日は毎月固定日にする(例:毎月25日)
- 振込で返済し、メモ欄に「借用書○月分返済」と記入
- 遅れそうな月は事前に連絡する(黙って遅れるのが最悪)
- 「少し待って」を繰り返さない(信頼が崩れるのは蓄積でおきる)
- 生活が苦しい時は正直に相談する(隠して遅れるより100倍マシ)
- 完済後、必ず感謝を伝える(関係修復の大きなチャンスになる)
これ、当たり前のことに見えますが、実際できている人はとても少ないんですよね。私の知り合いで、親から300万円借りた人がいました。毎月きっちり振込で返済し、完済した日に両親を食事に連れて行ったそうです。「あの子は本当に誠実だ」と親御さんが口々に言っていたという話を聞いて、なるほどなと思いました。「借りた」という事実より、「どう返したか」の方が記憶に残るものなんですね。
まとめ|家族間のお金の貸し借りで「後悔しない」ために
家族間のお金トラブルは、感情と法律と税金が複雑に絡み合っています。でも、事前に知っておくだけで防げることが実に多い。
貸す前に確認すること:
- 自分に余裕があるか
- 返ってこなくても後悔しない金額か
- 借用書を作れるか
貸す時にやること:
- 借用書を作成(漢数字・返済期限・署名捺印)
- 振込で貸す(証拠を残す)
- 返済も振込でもらう
返してもらえない時:
- LINEで穏やかに催促→内容証明→法的手続きの順で
- 時効(5〜10年)に注意。早めに動く
お金の話を家族にするのは、確かに気まずいかもしれません。でも、「気まずさ」を後回しにした結果、「関係の崩壊」という取り返しのつかない状況になることの方が、はるかに怖い。
書面を残すことは「疑っているから」ではなく「お互いの関係を守るため」です。そう考えると、少し気持ちが楽になりませんか。
大切な家族との絆を、お金で壊さないために。今日から一歩を踏み出してみましょう。
本記事に記載されている内容は一般的な情報提供を目的としています。個別の案件については、弁護士・税理士などの専門家にご相談ください。
よくある質問
Q. 借用書がなくても請求できますか? A. 口約束でも金銭消費貸借契約は成立します。LINEのやり取り・振込記録・会話の録音などが証拠になります。ただし証拠がないと法的請求が難しくなるため、できる限り書面を残すことをお勧めします。
Q. 親子間の贈与税の基礎控除はいくらですか? A. 年間110万円です。この範囲内であれば贈与税は発生しません。ただし「貸し借り」として扱うためには、借用書作成と返済実績が必要です。
Q. 家族間のお金の貸し借りで、消滅時効は何年ですか? A. 原則として返済期限から5年、または「権利を行使できる時から10年」です。返済を求める「催告」をすれば時効がリセットされます。
Q. 内容証明郵便はどこで出せますか? A. 日本全国の郵便局(一部の小規模局を除く)で送ることができます。費用は内容証明料430円+書留料435円+郵便料金の合計で、1,000〜1,500円程度が目安です。


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